
就職活動というと、スーツ姿で企業を訪ね、面接を受ける――そんな風景を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。しかし、情報収集の段階で「どの会社が自分に合っているのか分からない」「求人票だけではイメージがわかない」と感じた経験は、多くの学生が共通して持つ悩みかもしれません。
そんな中、熊本の企業と就活生を動画でつなぐ新しい就活支援サービス「クマリク@くまもと就職ガイド」がスタートしました。動画とSNSを活用し、企業の現場で働く人の声や、リアルな雰囲気を“見て”感じられる仕組みです。文字中心の求人情報では伝わりにくかった社風や働く環境を、より直感的に理解できるよう工夫されており、ミスマッチの減少にもつながると期待されています。
企業にとっても、自社の魅力を動画で発信できるのは大きな強みです。特に地元・熊本の中小企業にとっては、都市部の学生にも存在を知ってもらうチャンスとなり、採用の選択肢が広がります。就活のやり方が変わりつつある今、「動画で選ぶ就職先」という選択肢は、これからのスタンダードになるかもしれません。
学生と企業のミスマッチはなぜ起きるのか

就職活動では、多くの学生が「自分に合った会社がわからない」と感じながら、限られた情報をもとに企業選びをしています。特に求人票や企業説明会だけでは、仕事内容や社風、実際に働く人の雰囲気などを深く知ることは難しく、入社後に「思っていたのと違った」と感じるケースも少なくありません。
一方で企業側も、自社の魅力や働く環境を十分に伝えきれず、せっかく内定を出しても辞退されたり、早期離職につながってしまうなどの課題を抱えています。こうした「お互いをよく知らないまま始まる関係」は、結果としてミスマッチを生み出しやすい土壌となっています。
とくに地方においては、学生が企業の情報に触れる機会が限られており、首都圏と比べて情報格差が生まれやすいという現実もあります。学生が知らないまま見過ごしてしまう企業の中にも、働きがいや成長機会のある魅力的な会社が数多く存在しているのです。
このような状況を踏まえ、企業と学生がより深く相互理解できる仕組みづくりが求められてきました。採用活動においても、情報の質と伝え方が重要な要素になりつつある今、従来の形式にとらわれない新しいアプローチが注目を集めています。
熊本で始まった“動画で見る就活”という新提案

熊本県で、新しい就職活動の形を提案するプラットフォーム「クマリク@くまもと就職ガイド」がスタートしました。これは、熊本発のベンチャー企業である株式会社Evolivが立ち上げた、地元企業と就活生をつなぐサービスです。最大の特徴は、文字や写真だけでは伝わりづらい職場の雰囲気や働く人の想いを、動画でわかりやすく紹介する点にあります。
就職情報サイトでは一般的に、企業概要や仕事内容が文章でまとめられていますが、それだけでは実際の現場をイメージするのは難しいものです。「クマリク」では、SNSや動画を通じて企業の魅力をストレートに届けることで、学生が企業選びをしやすくし、入社後のギャップを減らすことを目指しています。
熊本県内の中小企業にとっても、この仕組みは大きなメリットがあります。限られた採用予算でも、動画という直感的なコンテンツを活用することで、学生に会社の個性や働く人の姿をよりリアルに伝えることが可能になります。地元に優れた企業があることを知ってもらうための有力な手段として期待されています。
SNSと動画で企業の魅力を直感的に伝える仕組み

「クマリク@くまもと就職ガイド」の大きな特徴は、動画を活用した企業紹介コンテンツにあります。各企業の紹介動画はおよそ3分程度とコンパクトにまとめられており、学生が気軽に視聴できる長さです。その中には、働く社員へのインタビューや社内風景の映像が盛り込まれ、企業の雰囲気や職場のリアルな声がダイレクトに伝わってきます。
求人票では伝えきれない「人」の部分――たとえば、どんなメンバーが働いているのか、上司との距離感、オフィスの空気感――そういった感覚的な情報は、就職先を選ぶうえで実は非常に重要です。「クマリク」ではこうした“言葉では説明しにくい部分”に焦点を当て、動画という手段で学生に届けています。
さらに、動画は特設サイトだけでなくSNSにも展開されており、学生が普段から使っているプラットフォーム上で企業情報に触れることができます。採用情報が自然に目に入りやすくなることで、これまで接点のなかった企業とも出会うきっかけになり、結果として新たな選択肢を広げる手助けにもなっています。
就職活動が「検索して探す」から「流れてきた情報に興味を持つ」時代へと変わる中で、動画とSNSの組み合わせは、就活のあり方そのものを大きくアップデートする可能性を秘めています。
採用の常識を変えるローカル発HRテック

「クマリク@くまもと就職ガイド」は、単なる動画付き求人サービスにとどまらず、地方の採用活動における課題をテクノロジーの力で解決しようとする、いわばローカル発のHRテック(人材×テクノロジー)の一つと言えます。熊本に拠点を置くベンチャー企業・株式会社Evolivがこの取り組みを推進しており、地域密着型ならではの視点で課題解決に挑んでいます。
地方企業の多くは、採用活動に十分なリソースを割くことが難しいという現実があります。自社で動画を制作したり、魅力を的確に打ち出したりするのは簡単なことではありません。その点、「クマリク」は動画制作や情報発信をワンパッケージで支援しており、企業の採用力を底上げする仕組みが整っています。
また、大手企業や都市部の企業に比べ、認知度で不利な立場にある地方中小企業にとって、「動画で“人となり”を伝える」アプローチは極めて有効です。スペックや条件だけでは測れない企業の魅力を、視覚的・感覚的に伝えることで、学生の記憶に残りやすくなり、エントリーにつながる可能性も高まります。
このように、テクノロジーを活用して“情報の非対称性”を埋める取り組みは、これからの採用活動においてますます重要になっていきそうです。地元の課題を解決する手段として生まれた取り組みが、同じような悩みを持つ他地域へと広がっていく未来も、そう遠くはないかもしれません。
就活のスタイルにも、地域からの変革が始まっている
就職活動のかたちは、いま大きく変わろうとしています。
文字や写真では伝えきれなかった企業の魅力を、動画やSNSが直感的に届けることで、学生と企業の間にあった距離が少しずつ縮まってきています。
「クマリク@くまもと就職ガイド」は、そんな変化を地方から支える新しい選択肢のひとつです。
情報の質と伝え方が問われる時代に、地元企業と学生の出会い方をアップデートしようとするこの取り組みは、これからの就活においても大きな意味を持つはずです。
見る・感じるをきっかけに、自分に合った企業と出会える未来。
その一歩が、熊本から静かに始まっています。