運転の自信、過信かも?AIが眼から読み取る“運転に必要な脳の力”

運転免許の返納が話題になるたびに、「自分の運転は本当に大丈夫だろうか?」と不安を感じる人も多いのではないでしょうか。高齢化が進む日本では、年齢や体調の変化によって運転に必要な反応や注意力が落ちていないかをチェックする機会がますます重要になっています。

しかし、「自分の感覚では大丈夫」と思っていても、実際には見落としている変化もあるかもしれません。そんな中、ある新しい技術が注目を集めています。それが、目の動きを使って運転能力を測定する装置「MEDEMIL Drive®(メデミルドライブ)」です。操作はとてもシンプルで、短時間の測定によって、自分の「運転に必要な脳の働き」がどのくらい保たれているかがわかるというもの。
病院や免許更新時の検査と聞くと堅苦しく感じてしまいがちですが、この技術はあくまで“自分の状態を知る”ための新しいサポートツールとして開発されました。

AIやセンシング技術を活用し、私たちの「見えない能力」を可視化する試みが、いま静かに動き始めています。

MEDEMIL Drive®とは?

MEDEMIL Drive®(メデミルドライブ)は、株式会社MEDEMILが開発した「眼の動きから運転能力を測定する装置」です。ドライバー数百名の過去の事故歴や眼球運動のデータをもとにAIを学習させ、独自のアルゴリズムと組み合わせることで、運転に必要な眼の機能だけでなく、認知力・注意力・判断力といった脳の働きを含めた“運転能力”を総合的に評価できるのが特長です。

測定は、PCやタブレットに表示される視覚刺激に反応することで行われ、専用のカメラが眼球運動を読み取ります。操作はシンプルで、被検者は画面の前に座って指示に従うだけでよく、特別な装置を身に付ける必要もありません。測定時間は3分程度と短く、医療機関や検査センターなどでも導入しやすいように設計されています。

さらに、測定後には視認性の高いUIで作成されたレポートが表示され、どの能力が高く、どの部分に課題があるかを直感的に把握することができます。複雑な数値ではなくグラフィカルな表示が採用されているため、本人はもちろん、医療従事者や第三者にとっても理解しやすい形式となっています。

支える技術:AIによる評価の仕組みとアップデート

本システムは、眼の動きから運転能力を推定する評価AIと、それを支える独自のアルゴリズムによって構成されています。このAIは、ドライバー数百名の過去の事故歴と眼球運動の特徴を学習しており、目の動きだけで運転に必要な能力を複合的に分析します。具体的には、視覚注意機能、情報処理速度、反応性、注意の持続力といった項目を総合的に評価できる設計になっています。

正式販売に向けたタイミングで、AIモデルやアルゴリズムの精度向上が図られており、測定結果の安定性が強化されています。あわせて、評価レポートの視認性も改善され、各能力の数値がより明確に把握できるようグラフ形式で表示されるなど、結果の伝わりやすさも工夫されています。

さらに、ソフトウェアには自動更新機能が加わり、使用環境に応じて常に最新の状態で運用できる体制が整えられています。こうした改良によって、MEDEMIL Drive®はより信頼性の高い運転能力評価ツールへと進化を遂げています。

追加された測定機能の注目ポイント

新たに「明暗への順応」という測定項目が追加されました。この機能は、周囲の明るさが急に変化した際に、視覚がどれだけスムーズに対応できるかを評価するものです。運転中には、トンネルの出入りや夜間の街灯の切れ目など、視界に大きな明暗差が生じる場面が少なくありません。こうした状況において適切に順応できているかどうかは、安全運転に直結する重要な要素のひとつです。

あわせて、運用面を支える機能もいくつか追加されています。ソフトウェアの自動更新機能は、管理者が手動でバージョンアップを行う手間を省き、常に最新の状態でシステムを使用できるようにする仕組みです。また、機器の持ち運びや保管を想定した専用キャリーケースも用意され、施設間での移動や保守管理の面でも使いやすさが向上しています。
測定精度の向上だけでなく、運用環境の使いやすさにも配慮された設計となっており、日常的な導入を想定したアップデートが加えられています。

使われ始めている現場の声

この装置はすでに一部の医療機関や検査施設などで導入が進められています。実際に現場で使用している担当者からは、従来の認知機能検査や問診とは異なり、眼の動きを通じて、より客観的に評価できる点に価値を感じているという声があります。

ある医師は、視線の動きという“生の反応”を通して脳の働きを推測できる仕組みによって、患者本人や家族への説明がしやすくなったとコメントしています。また、測定結果が視覚的にわかりやすい形式で出力されるため、医療の現場で初めて利用するスタッフにとっても扱いやすいという意見もあります。

さらに、運転に不安を感じている人や、免許更新を控えた高齢者にとって、自身の状態を「なんとなく」ではなく「数値とグラフ」で確認できる点は、自己判断を支える手がかりにもなっているようです。現場での活用が広がることで、より多くの人が自分の運転能力を冷静に見つめ直す機会を持てるようになっていくと考えられます。

社会に広がる“見えない能力”の可視化

運転は、ただ操作ができればよいというものではなく、注意力や判断力といった“見えない能力”が大きく影響する行動です。加齢や体調の変化によってそれらの力が徐々に低下していく中で、本人が自覚しにくいという点が安全面での課題になっています。

MEDEMIL Drive®は、そうした目に見えない運転能力を、客観的かつ定量的に把握する手段として注目されています。特別な知識がなくても短時間で測定でき、結果も視覚的に確認しやすい形式で提供されるため、利用者本人はもちろん、家族や医療従事者にとっても判断の材料となります。

一人ひとりが自分の状態を知ることができれば、不安からくる無理な運転を防ぎ、周囲と安心して話し合うきっかけにもなります。AIやセンシング技術の発展によって、人の能力を見える形で支えるこうしたツールは、今後ますます社会の中で役割を広げていくかもしれません。


株式会社MEDEMILについて

2023年3月、株式会社MEDEMILは東京医科大学当時在籍の学生発スタートアップ企業として誕生しました。企業コンセプトに「眼で診る健康、目で見る未来」を掲げており、眼球運動解析技術の研究開発を通じて、人々の健康に貢献することを目指しています。現在、近年増加傾向にある高齢者の自動車運転事故という重大な社会課題の解決に取り組んでいます。

URL:https://medemil.co.jp/

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