
近年の生成AIの飛躍的な進化は、私たちの生活をより豊かにする一方で、偽情報によるデマ拡散といった社会問題も抱えています。
そんな中、東京都は「東京ベイeSGプロジェクト」の一環として、小学生たちを対象とした「謎解きゲームでAIフェイクを見極めよう!メディアリテラシーを育むワークショップ」を開催。子どもたちは、ゲーム型教材『レイのブログ』を通じ、“正しい情報を探る力”を学びました。
さらに会場となった日本科学未来館「Tokyo Mirai Park」では「未来の1日」をテーマにAIロボットなど先端技術の展示も実施中です。
テクノロジーの光と影を体感する現場をレポートします。
子どもたちはどうやって「嘘」を見破るのか?体感型リテラシー学習とは

2026年7月25日、日本科学未来館「Tokyo Mirai Park “Lab”」には、33名の小学生と保護者の方々が集まりました。子どもたちは4つのグループに分かれ、謎解きゲームに挑みます。

今回、ゲーム教材として活用されたのは、慶應義塾大学発のスタートアップ「株式会社Classroom Adventure」が手がける『レイのブログ』。
各テーブルには謎解き封筒、そしてひとりずつにタブレットが配布されました。これを使い、『レイのブログ』に潜む“偽情報(フェイク情報)”を検証・特定することで、ファクトチェック(真偽検証)のスキルを学びます。
大人たちも「激ムズ!」緻密に構成されたゲーム構成に子どもたちは……?

『レイのブログ』は、会場正面のプロジェクターに映し出されるストーリーからスタートします。

~中学時代にタイムスリップしたあなたは、レイと名乗る匿名のクラスメイトから挑戦状を受け取る。
「私を見つけてください」というレイの言葉と共に残されていたのは、なぜか嘘の情報で溢れたブログだった。
現実と交錯するゲームの世界で、嘘と本当を見極め、レイの正体を暴こう~

子どもたちはさっそく手元のタブレットを操作し、レイのブログに隠されたフェイクを次々と検証していきます。その慣れた手つきは大人顔負け。それは、現代の子どもたちにとって「検索する」「AIに尋ねる」といった行動が、子どもたちの日常に根付いていることを実感する場面でした。

このゲームには、保護者や取材に訪れた記者も挑戦。しかし、子ども向けにふりがなこそふってあるものの、難易度はかなりハードなものでした。

ゲーム攻略には、まず始めにブログのどこにフェイクが隠されているかの“気づき”が必要。さらにそこからネット検索などで“正しい情報”を探し、ウソを見破っていきます。
どうしてもつまずいた場合は、登場人物からチャットのやり取りでヒントももらえるのですが――

子どもたちが次々にマップやサイト検索を進めていくかたわらで、苦戦する保護者や記者の姿は対照的でした。
「嘘を見抜く」だけじゃない。講義で語られたリテラシーの真意

ゲーム終了後、開発者の「株式会社Classroom Adventure」CEO・今井善太郎氏による解説と講義が行われました。
「生成AIの発展により、誰でも高精度な嘘を作れる時代だからこそ、情報を正しく扱うスキルが求められています」
今井氏はそう述べた上で、世界経済フォーラム(ダボス会議)でも「偽情報の広がり」が世界的な最重要課題として挙げられるほど、現代のフェイク情報問題が深刻化している現状について説明しました。
しかし、今井氏が最も強調したのは「すべての情報を疑うべき」ということではありません。
「見る情報すべてを疑っていたら疲れてしまいます。大切なのは、疑いすぎて何も信じられなくなることではなく、自分が安心して見られる情報源(一次情報)を持つこと。そして、怪しいと思ったときに立ち止まって調べる“自分を守るためのスキル”を身につけることです」
子どもたちは真剣な表情で耳を傾け、ゲーム体験を通して得た「情報への向き合い方」を深く胸に刻んでいるようでした。
開発者・今井氏が語る「ゲーム型」に込めた想い

「自分自身、学校の授業が退屈だと感じていた経験がありました。だからこそ『勉強させられている』感覚ではなく、ゲームとして本気で楽しめるものを作ろうと考えたんです」
高校時代にカナダの小学校で副担任を務めた経験も持つ今井氏。子どもたちの扱いの巧みさの背景には、現場で培われた視点と、自らの経験が生きています。

単に知識を詰め込むのではなく、自ら手を動かして正解にたどり着くストーリー体験。それこそが、子どもたちの身を守る一生もののリテラシーになるのかもしれません。
先端技術に触れる「Tokyo Mirai Park」展示も

今回のワークショップが行われた、日本科学未来館1階「Tokyo Mirai Park」の展示スペースでは、6月17日より「未来の1日」をテーマにした最先端テクノロジーの展示が行われています。
朝起きてから夜眠りにつくまでの「1日の流れ」を軸に、将来の日常がどのように変わるのかを、現在の暮らしと比較しながら体感できるエリアです。

人とギアが一体となる新しい移動体験を目指す次世代モビリティのコンセプトモデル。通勤・通学での活用など、未来の走行体験の可能性を示す技術です。

自ら組み立て、プログラムしたロボットを操縦し、フィールド上で陣地を奪い合う対戦型ゲーム。子どもたちの身近なロボットとして“将来の日常の遊び”体験ができます。

就寝時の体の動きをセンシングして寝苦しさを検知し、自動で背角度を調整してくれる最新の電動ベッド。固さを自動調整し、快適な睡眠環境を整える「AIマットレス」と併せて使用すれば、一日の終わりを快適に締めくくれそうです。
メディアリテラシーの理解でAIと賢く共存する未来へ

情報社会のいま、私たちに求められるのは、与えられた情報を“疑う力”、“正しい情報を探る力”、そして“自らの軸で判断する力”といえるでしょう。
AIの利便性に頼るばかりではなく、少しでも違和感を覚えた時がフェイク情報のサインかもしれません。結局、AIを扱うのはあくまでも私たち「人間」なのだということを忘れず、賢く共存していくのがこれからのAI社会の生き方になっていくでしょう。
<取材・撮影・文/櫻井れき>