介護の世界では、認知症の利用者に対する支援がますます重要視されています。しかし、認知症の方が日常生活でどのように感じ、何を見ているのかを理解することは、頭で知っているだけでは不十分です。そんな中、国際こども・福祉カレッジが10月17日に実施したVR(バーチャルリアリティー)を活用した認知症体験が注目を集めています。この体験では、学生たちが実際にVR機材を装着して認知症利用者の視点に立ち、利用者が感じる混乱や不安を疑似的に体験することで、支援の本質を学ぶというユニークな取り組みが行われました。この記事では、その体験の詳細と学生たちの反応、そして教育現場でのVR活用がどのように介護スキル向上につながるかを掘り下げていきます。
「本当の介護」を知るためのVR体験 ─ シルバーウッドとの連携による学び
今回のVR体験は、千葉県に本社を持ち、関東でサービス付き高齢者向け住宅を運営する株式会社シルバーウッドの協力により実現しました。介護現場での実際の経験を持つ職員が講師を務め、オンライン形式で講義を行いました。学生たちはVRを装着し、認知症利用者の目線で3つのシナリオを体験。その体験は、視覚や聴覚が混乱する状況を再現し、認知症の方が感じる日常的な困難や不安を疑似的に体感するものでした。
体験の内容は、たとえば自宅内で道に迷う場面や、周囲の会話が理解しづらい状況など、日常の中に潜む「見当識障害」の難しさを学生にリアルに伝えるものです。各シナリオの後には、グループでのディスカッションが行われ、「どうすれば利用者に安心感を与えられるか」や「適切な声かけや支援方法」について意見を交換しました。
実体験から学ぶ介護の大切さ ─ 学生たちの反応と気づき
VR体験を通じて、学生たちは認知症の方の視点に立つことで、新たな発見や気づきを得ました。体験した学生からは「実際に経験をすることで気づくことが多くあると感じました。恐怖心や、見当識など本当に不安にするものが見えているということが分かり、声がけや対応方法、利用者に寄りそった行動を取ることを求められていると実感しました」と感想を述べ、その経験が介護の実践にどう役立つかについて考える機会となりました。また、「自分だったらこんな風に声をかけてもらいたいとかこんな介護を受けたいと考えることが出来ました」との感想もあり、この体験を通じて介護の質を高めるヒントを得たようです。
グループワークを通じて他の学生の視点や意見に触れることで、多角的な視点から認知症ケアを考える力も養われたようです。
体験的な教育で未来の福祉人材を育成 ─ 国際こども・福祉カレッジの挑戦
国際こども・福祉カレッジは、教育機関として常に最先端の教育を追求し、体験的な学びを重視しています。今回のVR体験はその一環であり、学生にとっては認知症に対する理解を深めるだけでなく、実践的な支援方法を学ぶ貴重な機会となりました。同校では今後も、介護現場での経験を積んだ専門家を招いた講義や企業との連携による教育プログラムを通じて、学生が現場で即戦力として活躍できる人材の育成を目指しています。
介護の未来に向けた教育への期待
VRを用いた認知症体験は、教育の可能性を広げるだけでなく、介護の本質に迫る手段として非常に有効だと感じました。教科書の知識だけでは得られない「体感」を通じて、学生が介護に対する理解を深めることは、今後の福祉業界にとっても大きな意味を持つでしょう。今回の取り組みを通じて、学生たちは認知症の方々に対する支援のあり方を改めて見直す機会を得ました。特に、利用者の立場に立った視点で支援を考えることが、いかに介護の質を高めるかという点は、教育現場で広く取り入れられるべき重要な要素だと感じます。今後もこうした実践的な教育が継続されることで、福祉人材の質の向上が期待できるでしょう。
<概要>
●日時:2024年10月17日(木)
●会場:国際こども・福祉カレッジ 古町キャンパス
●内容: VR(バーチャルリアリティー)を使って認知症の利用者目線を体験
学校法人国際総合学園 国際こども・福祉カレッジ