世界的にビットコインの重要性が増す中、日本初のビットコインに特化した国際カンファレンス「Bitcoin Tokyo 2024」が9月21日から22日の2日間、渋谷で開催されました。このイベントは、フルグル合同会社と株式会社Diamond Handsの共催により、国内外からの参加者が一堂に会し、最新のビットコイン市場のトレンドや将来性について議論する場となりました。かつて日本はビットコイン市場の先駆者として世界をリードしていましたが、近年はその勢いが失速しているとされます。そんな日本市場を再び活性化させるため、今回のカンファレンスはビットコインの基礎から、最新の技術革新、さらには規制の未来まで幅広いテーマが取り上げられ、業界関係者や政府関係者も登壇。イベント全体を通じて、日本のビットコイン市場復活に向けた熱い議論が交わされました。
ビットコイン再興を目指す日本市場の動向
ビットコインは世界中で新たな経済インフラとしての地位を確立しつつありますが、日本ではその活用が一時停滞していました。特に、金融機関や政府の規制の影響により、国内でのビットコインの導入スピードが鈍化していたのは事実です。しかし、今回のカンファレンスを契機に、日本は再びビットコイン市場で重要なプレーヤーとなるべく、取り組みを強化し始めています。イベント主催者たちは、このカンファレンスが新たなビットコインコミュニティの形成や、規制の枠を超えた新しいビジネスモデルの提案を促進する場となることを期待していました。
政府・学界・業界トップが描くビットコインの新たな地平
カンファレンスの幕開けは、内閣府大臣政務官である神田潤一氏の祝辞で始まりました。神田氏は、カンファレンスに出席したJan3社のCEOであり、各国政府のビットコイン戦略策定を支援するSamson Mow氏とも会談。この会談は海外メディアにも注目され、SNS上でも大きな反響を呼び、国際的にビットコインへの関心が高まる様子がうかがえました。
続いて、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏が基調講演を行いました。野口氏は、日本の学界で最も早くビットコインに注目し、2014年からその可能性を提唱してきたことで知られています。今回の講演では、円安など日本経済が直面する課題に焦点を当て、それらの原因を解説しました。また、10年前に予想されたビットコインの未来と、現在の状況がいかに異なるかについても言及し、今後のビットコインの課題と可能性を参加者に投げかけました。
マイニングがエネルギー産業に与える波及効果
今年1月にアメリカで発売され、歴代ETFの記録を更新し続けているビットコインETFについて、SBI Zodia Custodyの狩野弘一氏とLaser Digital Japanの工藤秀明氏が議論を交わしました。ビットコインETFは資産運用におけるゲームチェンジャーと称され、日本市場での導入可能性にも言及されました。
一方で、バージニア工科大学/ジョージタウン大学の松尾真一郎研究教授は、アメリカと日本のビットコインやWeb3をめぐる温度差について言及しました。トランプ元大統領のビットコイン擁護発言により、さらに注目を集めていますが、日本国内ではビットコインに対する関心が遅れを取っている現状があります。日本がガラパゴス化を回避するための方策も議論され、日本市場が国際競争力を保つための重要性が強調されました。
さらに、ビットコインマイニングがエネルギー産業に与える影響について、国内の余剰電力をビットコインマイニングに活用する東電子会社アジャイルエナジーXの立岩健二氏と北米でマイニング事業に投資する三井物産の大西智敦氏が登壇。マイニングの環境負荷、マイニングが再エネ普及やエネルギー開発投資で果たす役割などについて解説しました。
過去の成功から学び、未来を切り開く日本のビットコイン市場
日本を代表する暗号資産交換所であるbitbankとビットコイン市場の新勢力であるメルコインのCEO廣末紀之氏と中村奎太氏が登壇し、日本のビットコイン市場の歴史振り返り、現状の課題や今後の展望について議論しました。
また、現在実用段階にある唯一のL2技術、ライトニングネットワークを共同考案したTadge Dryja氏が登壇し、ブロックチェーンのスケーラビリティ問題解決に階層構造アプローチを選択し、長期視点で事業を構築できる堅牢かつ安全な基盤と進化しつつあるビットコインについて、日本を代表するビットコイン開発者と議論しました。
国際的な成功事例から見る日本市場の未来のヒント
ビットコインを活用した海外の成功事例は、日本にとっても大きなヒントとなっています。ゲーム業界や国際送金、さらにはIoT分野において、ビットコインをビジネスに取り入れた先進事例が紹介されました。特に注目を集めたのは、あらゆるQRコードを読み取り、ビットコインやステーブルコイン、さらには日本円での支払いが可能なウォレットアプリ「OneScan」で、多くの参加者から大きな反響を呼びました。
また、ビットコインを法定通貨として導入したエルサルバドルとスイスのルガーノ市で、ビットコイン戦略策定に携わるMario Flamenco氏とGiacomo Zucco氏が、それぞれの地域での経済的メリットや、ビットコインが地域経済に与えるポジティブな影響を説明しました。さらに、Jan3のSamson Mow氏が、各国政府がビットコインをどのように捉え、保有状況についても紹介し、ビットコインの地政学的な重要性を浮き彫りにしました。
また、ビットコインのルーツと未来についても議論が展開されました。ビットコイン誕生につながる暗号技術を1997年に開発した現BlockstreamのCEOであるAdam Back氏と、生存が確認されている最古のビットコイン開発者Martti Malmiは、サイファーパンク運動から生まれたビットコインが、既存の金融システムをどのように変革し、将来的には国際金融インフラの基盤として進化する可能性があるかについて議論しました。
大成功を収めたカンファレンス、参加者の熱い反響
多くのイベント参加者からは、非常にポジティブなフィードバックが寄せられ SNSでもハッシュタグBitcoinTokyo2024の投稿が相次ぎ、国内外で大きな話題を集めました。
ビットコインの未来を支える新たなハブ、東京での始動へ
また、カンファレンスの最後には、主催者であるフルグル合同会社は、ビットコインの開発・教育・事業の拠点となる「Bitcoin Hub Tokyo」(仮称)を開設することを発表しました。「Bitcoin Hub Tokyo」は、国内外のビットコインミュニティが集うイベントスペースとco-workingスペース、海外の開発者や事業関係者が暮らすように滞在できるco-livingスペースを提供します。
日本ビットコイン市場の復活を見据えたカンファレンスの印象
このカンファレンスを通じて感じたのは、日本がビットコイン市場における影響力を再び高めようとしていることへの強い意欲です。特に、これまで規制や法的枠組みが壁となっていた部分を乗り越え、新しいビジネスモデルや技術の開発に向けた具体的なプランが提示されたことは、業界全体にとって大きな進展だと感じました。また、ビットコインがエネルギー産業や国際的な経済戦略とどのように結びつくのかを学べる機会は非常に貴重であり、今後の日本市場での成長が期待できると強く感じました。今回のカンファレンスを通じて、日本がビットコインの未来を切り開くための具体的な道筋が見えてきたのではないでしょうか。ビットコインという技術がどのように社会に浸透し、どのように活用されるのか、その進化を見守ることが楽しみです。