未来の海を考えるきっかけに 子ども向けワークショップが万博で開催

2025年の夏、大阪で開かれる国際博覧会(大阪・関西万博)に、海の環境をテーマにした少し変わったパビリオンが登場します。その名も「BLUE OCEAN DOME(ブルーオーシャンドーム)」。ここでは夏休み期間中、子どもたちが海の未来について考えるための体験型ワークショップが連続開催される予定です。

開催されるワークショップはいずれもユニークで、単なる学びにとどまらず、実際に体を動かし、観察し、考える構成になっています。例えば「魚を獲る」「売る」「届ける」といった海の仕事を体験したり、サンゴの食性を研究者のように観察してデータを取ったり、親子で工作やクイズに挑戦しながら“海を守るとは何か”を自然に学んだり。内容は週ごとに変わり、対象年齢も小学生から高校生、未就学児までと幅広く設定されています。

特に印象的なのは、どのプログラムも「知識を一方的に教える」のではなく、「自分で気づく」仕掛けが随所にちりばめられている点です。いま、私たちが直面する海洋汚染や資源の問題を、子どもたちが自分の体験として捉えられる貴重な機会になるかもしれません。

週替わりで学ぶ“海の体験” 3つのワークショップが夏休みに登場

夏休みを迎える大阪・関西万博の会場で、子どもたちが「体験しながら学ぶ」ことを目的としたワークショップが展開されます。舞台となるのは、海の再生をテーマにした民間パビリオン「BLUE OCEAN DOME」。ここでは、夏休み期間中を通して3種類の体験プログラムが週替わりで開催され、子どもたちの興味や関心に合わせた学びの場が用意されています。

注目すべきは、そのどれもが“実際に手を動かす”ことを前提としたアクティブなプログラムであること。学校の授業や動画では得られない、リアルな体験から得られる気づきや感動が、子どもたちの好奇心を刺激します。職業体験、科学観察、親子学習といった異なる角度から海と向き合う構成になっており、年齢や学年に応じた参加ができる点も魅力です。

「知る」だけでなく「感じて考える」。そんな夏の体験が、未来の環境意識につながるかもしれません。

発見!体験!集え未来のフィッシャーマン!

夏休みの1週間限定で開催される「発見!体験!集え未来のフィッシャーマン!」は、海や魚に関わる仕事を体験できるワークショップです。対象は小学校1年生から中学2年生まで。プログラムでは、漁師や魚屋、流通に関わる仕事など、海と魚にまつわる7つの職業を日替わりで学ぶことができます。
普段なかなか目にすることのない「魚を獲る・運ぶ・売る」といった現場の仕事に触れられるのが、この体験の大きな魅力。しかも、どの職業にも最新の技術や工夫が取り入れられていて、「実はハイテクなお仕事」だということを発見できる内容になっています。
講師を務めるのは、海の現場を知るプロフェッショナルたち。リアルな仕事の話や、実際の道具に触れる機会もあり、五感を使った学びができるのが特徴です。子どもたちが将来の職業を考えるきっかけにもなりそうですし、自由研究のテーマとしてもぴったりな内容です。

【日時】2025年7月28日(月)〜8月3日(日)
13:00〜/13:50〜/14:40〜/15:30〜/16:20〜
【対象年齢】6歳(小1)〜15歳(中2)

サンゴの好きを探し出せ!EXPO EDITION

「サンゴの好きを探し出せ!EXPO EDITION」は、子どもたち自身が“研究者”としてサンゴと向き合う、本格的な科学体験型ワークショップです。対象は10歳から18歳まで。サンゴは何を食べるのか?マイクロプラスチックを食べてしまうことがあるのか?といった疑問に対し、自分で仮説を立てて実験・観察を行います。
実際にサンゴにエサを与え、摂食の様子を観察し、データを記録するというプロセスを通して、科学的なものの見方や考え方を学ぶことができるのが特徴です。体験を通じて得られたデータは、将来的に環境研究に活用される可能性もあり、子どもたちの取り組みが社会貢献にもつながる設計となっています。
“シチズンサイエンス”と呼ばれるこの取り組みは、専門家だけでなく市民や子どもたちも研究に参加するという考え方に基づいたもの。身近な自然を題材にしながら、科学的思考や問題意識を育てる貴重な機会となっています。

【日時】2025年8月5日(火)〜8月17日(日)
13:00〜/14:30〜/16:00〜
【対象年齢】10歳〜18歳

親子で学ぶ!わたしたちの海とオーシャンリテラシー

「親子で学ぶ!わたしたちの海とオーシャンリテラシー」は、未就学児から小学生までの子どもとその保護者を対象にした、親子参加型のワークショップです。ゲームやクイズ、工作などを通じて、海のことを楽しく学ぶことができる内容となっています。
このワークショップでは、「海ってどうして大切なの?」「海の生きものを守るには何ができる?」といった問いを、遊びの中で自然に考えられるように工夫されています。正解を覚えるのではなく、体験を通じて「自分ごと」として海の問題に触れられることがポイントです。
また、会場では海洋研究や環境保護に関わるさまざまな団体や研究機関のスタッフがテーマに応じて講師を担当します。専門的な知見をわかりやすく伝えてくれるため、小さな子どもでも理解しやすく、保護者にとっても新たな学びがあるプログラムです。
夏の終わりに親子で参加すれば、自由研究のテーマ探しだけでなく、日常生活の中で“海を守る”という視点を持つきっかけにもつながりそうです。

【日時】2025年8月25日(月)〜8月31日(日)
13:00〜17:00
【対象年齢】未就学児〜小学生の親子

「海の蘇生」を掲げる民間パビリオン BLUE OCEAN DOMEとは

これらのワークショップが行われる「BLUE OCEAN DOME(ブルーオーシャンドーム)」は、大阪・関西万博に出展している民間パビリオンのひとつです。テーマは「海の蘇生」。美しい海を次の世代へと引き継ぐために、持続可能な海洋資源の活用や生態系保全の視点から企画が設計されています。

このパビリオンを運営するのは、特定非営利活動法人ゼリ・ジャパン。循環型社会の実現を目指し、廃棄物を限りなくゼロに近づける「ゼロ・エミッション構想」の理念に基づいた活動を行ってきた団体です。

大阪・関西万博においては、G20大阪サミットで発表された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向けた取り組みの一環として、海洋ごみや環境問題と向き合う場を提供しています。環境問題を学びの対象としてだけでなく、自分の行動を見直す“気づき”を促す場としても、このパビリオンは意義ある存在といえそうです。

体験することで、海の未来を自分ごとに

気候変動や海洋汚染といった環境の問題は、日々ニュースで目にする機会が増えていますが、それを「自分ごと」として捉えることは決して簡単ではありません。だからこそ、実際に体験を通じて知り、感じ、考える場が求められています。

「BLUE OCEAN DOME」で開催される一連のワークショップは、子どもたち自身が手を動かし、現場の声に耳を傾け、自らの発見を得ることで、海の未来について自然と意識を向けられるように設計されています。職業体験から科学研究、親子の学びまで、それぞれの年齢や関心に合わせた多様なプログラムが用意されているのも魅力です。

自由研究のテーマ探しや夏の思い出づくりはもちろん、これからの社会を担う子どもたちが環境と向き合うきっかけとしても、十分な価値を持つイベントといえるでしょう。夏休みの特別な一日に、“海の未来”に触れてみるのも良いかもしれません。

おすすめの記事