
会計ファイナンス⼈材育成を手がけるCPAエクセレントパートナーズ株式会社は、2025年11⽉21⽇(⾦)の公認会計⼠試験の合格発表当⽇に合わせ、プレスラウンドテーブルを開催しました。
当日は、公認会計士をはじめとする高度会計ファイナンス人材がなぜ今の社会で求められているのか、その背景や最新の知見が語られました。
公認会計士制度や試験の変化に加え、企業が直面するリスクの複雑化や非財務情報の重要性など、多様なテーマが専門家の視点から整理され、今後のキャリア観にも関わる内容が紹介されました。
「数字以外の信頼」が問われる時代へ――SSBJ開示基準が示すもの

2025年3⽉には、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)による開⽰基準が公表されました。これにより、従来の財務情報だけではなく、企業が「数字以外の信頼」をどのように示すのかが問われるようになっています。
企業価値の源泉が多様化する中で、DXやAIの普及、人的資本への投資拡大など、経営環境はかつてないスピードで変化しています。こうした変化に伴い、企業が「信頼できる組織であること」を説明するためには、財務・非財務を横断した深い理解と分析が不可欠になってきています。
財務・非財務の両面を扱う専門職として公認会計士の役割が拡大

こうした背景の中、「医師」「弁護士」と並ぶ三大国家資格のひとつである公認会計士が担う役割は大きく変化しています。
従来のように財務諸表の監査だけにとどまらず、非財務情報の信頼性を担保する専門職としての役割が広がっていると指摘されています。サステナビリティ開示や人的資本開示など、新たな領域で会計士が果たす役割は年々高まり、企業側からのニーズも明確に増加しています。
企業価値の考え方が転換する中で求められるスキルとは?

モルガン・スタンレー証券で12年以上勤務し、スタートアップCFOとして累計100億円以上の資⾦調達を実現した星直人氏も登壇しました。
星氏は、企業が直面する新たなリスクや開示の潮流を踏まえながら、「日本企業の経営テーマは、PL中心から、バランスシートやキャッシュフローを基盤に企業価値を設計する方向へ大きく転換している」と説明しました。
この変化により、企業が求める人材像も大きく変わっています。財務データを読めるだけではなく、企業価値の構造を理解し、非財務情報を組み合わせて総合的に分析できるスキルが求められています。公認会計士をはじめとする高度な会計ファイナンス人材が重視されている理由は、まさにこの総合力にあります。
なぜ会計ファイナンス教育は広まりにくいのか?

一方で、会計ファイナンス教育が日本で十分に広まっていない実情も語られました。
CPA代表取締役社長の国見健介氏は、「簿記検定教育が強すぎることが課題」だと指摘します。多くの学生が最初に触れるのは簿記であり、借方・貸方・記帳といった具体的な仕訳の技術から入ることで、苦手意識を持ちやすい構造があると説明しました。
国見氏はさらに、「海外では簿記の技術ではなく、アカウンティング思考やファイナンス思考から学びを始めるため、授業としての人気も高い」と比較します。
日本では仕訳がスタート地点になってしまうため、会計の面白さやビジネスとの関連性を体感しにくく、導入段階でハードルが高く感じられてしまうことが、教育普及の壁になっているとの見解を示しました。
今後の会計ファイナンス人材育成には、実践的な導入教育が不可欠になると言います。
試験制度変更のポイントとCPAの今後の展望

当日は2025年の公認会計士試験の合格者数(速報値)や、2025年12月に予定されている試験制度変更のポイントも共有されました。制度改正により試験内容が時代の変化に合わせて再構成され、より実務に近い形での評価が期待されています。
CPAエクセレントパートナーズが多くの合格者を輩出している理由や、今後の教育方針についても語られ、会計ファイナンス領域の未来像がより具体的に示されました。
高度専門人材が活躍する未来に向けて

今回のラウンドテーブルでは、「なぜ今、公認会計士をはじめとする高度なスキルを持つ人材が求められているのか」という問いに対し、制度・企業側の変化・教育の課題・人材価値の観点から多角的に語られました。
財務と非財務が一体となる現代において、専門性を持つ人材が果たす役割は今後さらに広がることが予想されます。
会計ファイナンス領域は大きな転換期にあり、社会全体がその変化と向き合うタイミングを迎えています。