採用は“実行力”の時代へ SNS運用が人事を圧迫する実態とは

企業の採用活動が、ここ数年で大きく変わってきています。求人サイトに情報を掲載するだけではなく、SNSでの発信や動画、記事コンテンツなど、多様な手法が求められるようになりました。一方で、それらをすべて実行するには想像以上の工数がかかり、現場では対応が追いついていないケースも少なくありません。

実際に、人事担当者の多くが「やりたい施策はあるものの、最後まで実行しきれていない」と感じている状況が見えてきています。採用の成果が思うように伸びない背景には、単なる人手不足だけではなく、業務の複雑化や役割の増加といった構造的な課題があるようです。

では、なぜ今の採用はここまで難しくなっているのでしょうか。そして企業は、どのようにこの状況を乗り越えようとしているのでしょうか。調査データをもとに、その実態をひも解いていきます。

採用はなぜうまくいかないのか 見えてきた厳しい現実

企業の採用活動は、思っている以上に難易度が上がっています。直近のデータを見ても、採用目標の人数をしっかり達成できている企業はおよそ3割にとどまり、多くの企業が「一部は達成できたが、すべては満たせていない」という状態にあります。

さらに注目すべきなのは、人事担当者の意識です。採用に関わる担当者のうち、8割以上が「やるべき施策をやりきれていない」と感じているという結果が出ています。これは単に成果が出ていないという話ではなく、「本来やりたいことが実行できていない」という、より根深い問題を示しています。

実際、採用活動ではやるべきことが増え続けています。求人媒体への掲載だけでなく、企業の魅力を伝えるための情報発信やコンテンツ作りなど、対応範囲は広がる一方です。その結果、一定の成果は出ていても、目標には届かない“中途半端な状態”に陥っている企業が多いのが現状です。

採用がうまくいかない理由は、単純に「応募が来ないから」といった表面的なものではありません。やるべきことが明確にあるにもかかわらず、それを実行しきれない構造が、多くの企業に共通している課題として浮き彫りになっています。

本当の原因は「人手不足」ではない 採用現場で起きていること

採用がうまくいかない理由として、最も多く挙げられているのは「人手不足」です。やりたい施策のアイデアはあるものの、実際に手を動かす人が足りず、実行に移せないという声が多く見られます。

ただ、この問題は単純に人数を増やせば解決するものではありません。背景には、採用業務そのものの変化があります。従来のように求人情報を掲載するだけでなく、今は企業の魅力を伝えるための“発信”が重要になっています。

具体的には、SNSの運用や記事コンテンツの制作、動画の作成など、マーケティングに近い業務が採用の中に組み込まれています。さらに、それらは一度作って終わりではなく、継続的に更新し続ける必要があります。こうした作業が積み重なることで、現場の負担は一気に増えていきます。

加えて、人事担当者が採用以外の業務も兼任しているケースも少なくありません。総務や人材管理などの仕事と並行して採用を進める中で、どうしても優先順位が分散し、結果として施策を最後までやりきれない状況が生まれています。

つまり、採用がうまくいかない原因は単なる人手不足ではなく、「やるべき業務の量と質が大きく変わっていること」にあります。採用はすでに、従来の人事業務の枠を超えたものへと変わりつつあります。

採用は“情報発信の質”を競う時代へ 変わる企業の取り組み

では企業は、こうした状況の中で何を強化しようとしているのでしょうか。
データから見えてくるのは、「どのように伝えるか」を重視する動きです。

中でも最も多かったのが、SNSの公式アカウント運用です。企業の雰囲気や働き方を日常的に発信し、求職者との接点を増やそうとする取り組みが広がっています。これに加えて、動画の制作や記事コンテンツの発信、採用サイトの改善など、いわゆる“見せ方”に関わる施策が上位に並びました。

これらに共通しているのは、単なる情報掲載ではなく、「企業の魅力をどれだけ分かりやすく、継続的に伝えられるか」が重要になっている点です。求職者は求人情報だけで判断するのではなく、日々の発信やコンテンツを通じて企業を知り、応募を検討するようになっています。

一方で、こうした施策は手間がかかるものばかりです。SNSの更新やコンテンツ制作は継続が前提となるため、一時的に力を入れるだけでは成果につながりにくいという特徴があります。そのため、実際には「やりたいが続けられない」という状況に陥るケースも少なくありません。

採用は今、「どこに掲載するか」ではなく、「どんな情報を、どのように届けるか」を競うフェーズに入っています。企業にとっては、発信の質そのものが採用力を左右する時代になっていると言えそうです。

解決のカギは“実行体制とスキル” 採用を前に進めるために必要なこと

こうした状況を踏まえ、企業が求めているのは「施策をやりきるための体制づくり」です。
中でも多く挙げられているのが、外部パートナーの活用です。社内だけで対応するのではなく、専門的なスキルを持つ人材やサービスを取り入れることで、実行力を補おうとする動きが見られます。

あわせて、採用以外の業務を見直し、役割を整理することや、専門スキルを持った人材の確保といった“体制そのもの”の強化も重要視されています。つまり、採用の成果を上げるためには、施策の内容だけでなく、それを実行できる環境を整えることが不可欠になっているということです。

また、個人のスキル面でも変化が求められています。特に重視されているのが、「決めたことを最後まで進める力」と「周囲を巻き込みながら進める力」です。採用は一人で完結する業務ではなく、現場や経営層、外部パートナーなど多くの関係者と連携しながら進める必要があります。そのため、単なる作業スキルだけでなく、プロジェクトを動かす力が求められるようになっています。

こうした課題に対して、PM(プロジェクトマネジメント)支援を手がけるrayout株式会社も、採用プロジェクトを前に進めるための考え方や進め方を提示しています。個人の能力に頼るのではなく、「どう進めるか」を設計することで、再現性のある形で成果につなげていくことが重要だとされています。

採用を成功させるためには、優れた施策を考えるだけでは足りません。それを確実に実行できる体制と、プロジェクトとして前に進める力。この2つが、これからの採用において欠かせない要素になりつつあります。

採用は“実行力”で差がつく時代へ

ここまで見てきたように、採用を取り巻く環境は大きく変化しています。SNSや動画、記事コンテンツなど、企業が発信すべき情報は増え続けており、採用は単なる人事業務ではなく、より広い領域へと広がっています。

その一方で、多くの現場では「やるべきことは分かっているのに、実行できない」という状況が続いています。これは個人の能力の問題というよりも、業務量や役割の増加、体制の不足といった構造的な課題が影響していると考えられます。

今後の採用において重要になるのは、「何をやるか」だけではなく、「それを継続して実行できるか」という視点です。施策のアイデアやツールが充実する一方で、それらを運用し続ける体制やスキルがなければ、成果にはつながりません。

採用はすでに、企業の魅力を伝えるための総合的な取り組みへと変わっています。だからこそ、施策の選定だけでなく、それを支える人材や仕組みづくりまで含めて考えることが、これからの企業に求められていると言えそうです。

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