メタバースで描くITエンジニアの未来——「ProTechOne 2026」が提示したAI時代の生存戦略

生成AIの急速な進化によってエンジニアを取り巻く環境が激変する中、2026年6月13日に新しい働き方を提案するイベント「ProTechOne 2026」が行われました。

同イベントの最も画期的なポイントは、今回初となる「メタバース空間」での全面開催に踏み切った点です。
イベント内では、これからのAI活用法やキャリア形成について、フロントランナーたちによるプレゼンテーションが行われたほか、協賛企業によるメタバース展示も実施されました。

ITエンジニアがこれからの時代を生き抜くためのヒントがたっぷりつまった、新しい時代をけん引するイベントの模様をレポートします。

「ProTechOne 2026」とは?

「ProTechOne 2026」は、株式会社PE-BANK主催の、ITエンジニアの未来を共に考えるフォーラムです。今年で5回目となる同イベントでは、初の試みとして、双方向でコミュニケーションが取れるメタバース空間で全面開催されました。

株式会社PE-BANK 代表取締役 髙田幹也氏(のアバター)

冒頭の挨拶に登壇した同社代表取締役社長の髙田幹也氏は、まず今回のメタバース開催への挑戦について言及。これまでの「一方通行」のセミナー形式から脱却し、参加者同士が双方向にコミュニケーションを取れる場を目指したという、初開催の趣旨を説明しました。

背景として、ITやAIの活用が広がる中でエンジニアの働き方や求められるスキルが大きく変化している点を挙げ、今回のフォーラムが今後のキャリアを考えるきっかけになってほしいと語った上で、参加者に向けて次のように呼びかけました。

「この会をきっかけに参加者の皆様同士が繋がり、新たな気づきや挑戦が生まれるイベントとして発展させていければと思っております。本日はご協賛企業やPE-BANKのブースも用意しておりますので、せっかくのメタバース開催ですから、ぜひ会話や交流も楽しみながら各セッションをお過ごしください」

近未来メタバース会場のリアルを体験

今回、このような取材スタイルは初めての経験となります。まずは実際の使用感を体験すべくメタバース会場へと向かいました。

入場前に、いくつか用意されているパターンの中から自分の分身となるアバターを設定します。一歩足を踏み入れると、そこには近未来的な広大なドーム型の会場風景が広がっていました。

会場内は、プレゼンテーションが行われる「メインステージ」のほか、2つのエリアに分かれた展示ブースが設けられています。展示エリアには各協賛企業の趣向をこらした展示があるほか、スタンプラリーやクイズゲームなどのアトラクションも用意されていました。

こちらがイベントの核となる、メインステージです。この日はここで、6名の登壇者によるプレゼンテーションが行われる予定です。

簡単なアバター操作で、観客席に座ることができました。ほかにも、周囲とコミュニケーションを図るための「挙手」や「拍手」、「イイネ」などのリアクションをはじめ、「しゃがむ」、「お辞儀」などの動作も可能です。

登壇者の音声は、ステージに近づくと大きく聞こえ、離れると小さくなる仕様です。まるで本当にその場にいるかのような臨場感が表現されていました。

――と、ここまでは素晴らしいシステムですが、いざ本番が始まると初開催ならではの不具合も。

使用ブラウザによっては音声が聴こえない、聴衆側のマイクによるハウリング、画面フリーズによる一時強制シャットダウンなど、運営側も対応に追われる場面が見られましたが、メタバース開催ならではの課題と可能性の両方を感じる機会となりました。

フロントランナーたちが提示するAI時代を生き抜くための生存戦略

本フォーラムでは、IT業界の最前線で活躍する登壇者たちが、AIと人間の共生についてそれぞれの視点からプレゼンテーションを行いました。
その中から、特に印象的だった2つのセッションをピックアップして紹介します。

AIに代替されるフリーランス、AIを操りチームを導くリーダー。運命を分ける『AI-DLC』とインテントマネジメント

株式会社ジェネラティブエージェンツ取締役COO 吉田真吾氏

最初のプレゼンテーションには、株式会社ジェネラティブエージェンツ取締役COOの吉田真吾氏が登壇しました。吉田氏は、AIがコードを自動生成する時代において、感覚的にコードを書く「バイブコーディング」と「仕様駆動開発」を併用するハイブリッドな手法の必要性を指摘します。 

仕様書を唯一の情報源(シングルソースオブトゥルース)としてAIにプログラムを生成させる現状を踏まえ、吉田氏は「そうなった時に重要になるのが『インテントマネジメント(意図の管理)』です」と強調。自分たちが何を作りたいのかという「意図」を理解してAIを使いこなす必要があり、コーディング作業だけで食っていくのは難しい世の中になっていると警鐘を鳴らしました。

また、今後のキャリアに向けては「新人教育がいらなくなるわけではない」とし、これからのエンジニアは単なる作業者ではなく、「組織やチームの変革をリードするチェンジメーカーになってほしい」と、新たなリーダー像を提示しました。

エンジニアの未来のキャリアと働き方─ AI・DX・新規事業・人材育成の現場から見えてきた選択肢

株式会社BeeS 代表取締役社長/エバンジェリスト 古宮浩行氏

続いて登壇したのは、株式会社BeeS代表取締役社長の古宮浩行氏です。古宮氏は、AI時代において変化しない技術はなく、自ら学び続ける仕組みを持つことこそが最大の安定であると指摘。単なるインプットにとどまらず、「シンク・アンド・ムーブ(思考し、動く)」ことの重要性を説きました。

特にDXの局面においては、従来の技術力や課題解決力(ソリューション)よりも、自ら問いを立てる「課題形成力」が不可欠になると強調。知識は過去のものとしてAIに委ね、人間は未来を作り出す「知恵」を生み出すために、業務時間の半分を思考に充てるべきだと語ります。 後半では、古宮氏が長年実践しアップデートしてきた「大切にしたい14カ条」を紹介。「反省はするが後悔はしない」といった判断基準の持ち方や、フリーランスにこそ必要なリーダーシップのあり方を提示しました。

AIの進化に振り回されない「自律的な知恵」

初のメタバース開催となった「ProTechOne 2026」は、AI時代のエンジニアのあり方を提示する有意義なイベントとなりました。
吉田氏が語った「AIを使いこなすための仕様化スキル」や、古宮氏が強調した「自ら問いを立てる課題形成力」は、まさに私たちがこれから身につけるべき、生き抜くための「知恵」と言えます。

一方で、今回のメタバース会場はアバターの選択肢が限られ、登壇者や参加者の見た目が被るという課題も見られました。今後カスタム仕様が進めば、より機能的な空間になりそうです。
テクノロジーに振り回されず、自律的に考え、動く大切さを、改めて冷静に実感させられる一日となりました。

<取材・撮影・文/櫻井れき>

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