江戸川区がメタバース区役所を開設 24時間相談できる行政の新しいかたち

「役所に行く」という当たり前の行動が、大きく変わるかもしれません。東京都江戸川区で、インターネット上のバーチャル空間に“区役所”を再現し、24時間いつでも相談や手続きができる新たな取り組みが始まっています。

スマートフォンやパソコンからアクセスできるこの空間では、自分の分身となるアバターを使って職員とやり取りができるほか、AIが常に待機し、時間を問わず質問に応えてくれる仕組みも用意されています。さらに、多言語での対応にも配慮されており、利用する人の環境に左右されにくいサービス設計が進められています。

場所や時間、言葉の壁にとらわれずに行政サービスへアクセスできる環境は、どのように日常を変えていくのでしょうか。その仕組みと可能性を見ていきます。

「行けない」「伝わらない」をなくすための新しい役所のかたち

役所の窓口は、平日の限られた時間に足を運ぶ必要があり、仕事や家庭の都合によっては利用しづらい場面も少なくありません。また、日本語でのやり取りに不安がある人や、外出が難しい人にとっても、手続きや相談のハードルは決して低いものではないのが現実です。

江戸川区では、こうした状況に対応するため、「誰もが利用しやすい行政サービス」を目指したデジタル化を進めています。その一つとして登場したのが、インターネット上に区役所を再現する“メタバース区役所”です。

時間や場所に縛られず、誰でもアクセスできる環境を整えることで、これまで届きにくかった人にも行政サービスを届ける。今回の取り組みは、そうした課題に対する一つの解決策として位置付けられています。

アバターで相談 現実に近い“窓口体験”を再現

メタバース上に再現された区役所では、実際の窓口に近い形で相談ができるよう設計されています。利用者は自分のアバターを操作し、各窓口に移動することで、担当部署の職員とやり取りを行うことができます。

やり取りは音声やテキストで行われ、近くにいる人にだけ会話が聞こえる仕組みが採用されているため、周囲を気にせず相談しやすい環境が整えられています。また、よりプライバシーに配慮したい場合には、個別の相談室に案内されることで、落ち着いて話ができるようになっています。

職員側もアバターとして参加しており、バッジやリングなどで識別できる工夫が施されています。オンラインでありながら、誰に相談しているのかが分かりやすく、現実の窓口に近い安心感を意識した設計がなされています。

24時間いつでも相談できる AIと翻訳機能で広がる使いやすさ

このメタバース区役所の特徴のひとつが、時間や言語の制約を受けにくい点です。空間内にはAIコンシェルジュが常時待機しており、基本的な問い合わせに対してその場で回答できる仕組みが用意されています。窓口の受付時間を気にすることなく、必要な情報にアクセスできる点は大きな変化と言えそうです。

また、テキストチャットにはリアルタイム翻訳機能が導入されており、英語や中国語、韓国語など複数の言語に対応しています。日本語でのやり取りに不安がある場合でも、言語の違いを意識せず相談できる環境が整えられています。 時間帯や言語の壁によって利用をためらっていた人にとっても、こうした機能は行政サービスとの距離を縮めるきっかけになりそうです。

“行かなくてもいい役所”は広がるのか 見えてきた可能性と課題

メタバース区役所では、相談対応だけでなく、イベントの開催にも活用できる設計となっています。説明会などをオンライン上で実施することで、場所にとらわれず多くの人が参加できる環境が整えられています。

こうした取り組みは、行政サービスのあり方そのものを見直すきっかけにもなりそうです。実際に足を運ばなくても手続きや相談ができる環境が整えば、日常生活の中で役所との関わり方も変わっていく可能性があります。

一方で、デジタル機器の操作に慣れていない人や、インターネット環境が十分でない人にとっては、利用のハードルが残る点も考えられます。利便性が高まる一方で、すべての人にとって使いやすい仕組みとして定着していくためには、こうした課題への対応も求められそうです。

行政サービスは“行く場所”から“つながるもの”へ

インターネット上に区役所を再現し、時間や場所にとらわれず利用できる環境を整える今回の取り組みは、これまでの行政サービスの前提を大きく変える可能性を感じさせます。

窓口に足を運ぶことが当たり前だった手続きや相談も、今後は自宅や外出先から気軽に行えるようになるかもしれません。AIによる対応や多言語機能の導入によって、より多くの人にとって利用しやすい仕組みが広がりつつあります。

まだ新しい試みではありますが、こうした動きがどのように広がっていくのかは注目が集まりそうです。“行かなくてもいい役所”という選択肢が、今後のスタンダードになっていくのかもしれません。

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