
農業界における革新がまた一歩進みました。ロボティクスとAI技術の融合により誕生したHarvestXのイチゴ自動栽培ソリューションが、ついに商業利用として動き出します。11月8日、浜松市の「浜松ファーム」にて開催された記者会見で、HarvestXが開発した世界初の自動授粉ロボットを使用したシステムが、春華堂の人気商品「うなぎパイ」の製造に役立てられることが発表されました。季節を問わず安定した品質のイチゴを供給できるこの技術は、日本の農業の未来を担う重要な一歩となるでしょう。浜松市と地元企業の協力でスタートするこのプロジェクトには、地域活性化と食料生産のサステナビリティという大きな使命が込められています。本記事では、この画期的なプロジェクトの背景と技術的な魅力に迫ります。
記者会見で明かされた浜松ファーム開業の背景と意義

11月8日(金)、浜松市内にて「浜松ファーム」開業とHarvestXのイチゴ自動栽培システムの導入を記念した記者会見が行われました。会場には自治体やメディア関係者をはじめ、多くの関係者が集まり、地域と連携した新たな農業の未来に期待を寄せました。
会見には、浜松市長の中野祐介氏や浜松いわた信用金庫の髙栁裕久理事長、春華堂の代表取締役である山崎貴裕氏、そしてHarvestX代表取締役の市川友貴氏が登壇し、浜松ファーム開業までの支援体制や製品導入の背景等について語りました。
地域と連携した浜松ファーム開業の意義
HarvestXの自動栽培ソリューションが導入された「浜松ファーム」は、浜松市と浜松いわた信用金庫の支援のもと、2024年5月に開設されました。この農業プロジェクトは、地域の特色を活かしながら地元の食品メーカー春華堂への供給を可能にすることで、食産業の新たな形を示しています。春華堂は、浜松の銘菓「うなぎパイ」に使用するイチゴの安定供給を目指してHarvestXのシステムを導入。これにより、収穫時期に関係なく高品質なイチゴを原料とした新しい商品展開が期待されています。
世界初!イチゴ自動栽培ソリューション「HarvestX」とは

HarvestXが開発した自動栽培システム「HarvestX」は、イチゴの「植物管理」と「授粉」を完全自動化する革新的なソリューションです。これにより、人手に頼らない安定した収穫が可能になり、生産コストも削減されるなど、生産者にとって大きな利点が生まれています。さらに2025年には「収穫」工程も自動化される予定であり、完全な自動栽培の実現に向けた進化が進行中です。
高精度な授粉ロボット「XV3」—持続可能な生産を支えるテクノロジー
「HarvestX」の核となるのが、ロボティクス技術で開発された授粉ロボット「XV3」です。XV3は、植物工場内で自動走行し、適切なタイミングでイチゴの花を授粉する機能を持ち、植物の状態をセンシングして最適な環境を維持します。XV3は「XV3 Cart」と「XV3 Unit」の2つのモジュールで構成され、状況に応じた柔軟な対応が可能であるため、さまざまな環境下でのイチゴ生産が実現します。また、他の果菜類にも応用できる設計となっており、将来的な機能アップデートにも対応するなど、拡張性の高い仕組みが備わっています。
来を見据えたHarvestXの挑戦とビジョン
HarvestXは東京大学で2018年に発足したスタートアップで、「未来の世代に、豊かな食を。」を企業理念に掲げ、持続可能な農業を実現するためのソリューション開発に取り組んでいます。イチゴのような授粉が必要な作物の生産が難しいとされる植物工場の課題に着目し、ロボットによる自動授粉の成功を世界で初めて成し遂げました。今後もHarvestXは、ロボティクスやAIを駆使して、食料生産の未来を見据えた技術革新を進めることで、世界中の農業界に変革をもたらすことを目指しています。
新しい農業の形が切り開く未来
HarvestXによるイチゴ自動栽培ソリューションは、食料生産の持続可能性を追求するうえで非常に画期的な技術です。浜松市での地元企業や自治体との連携も、地域経済の活性化と環境に配慮した農業の形を模索する重要な事例となるでしょう。気候変動の影響で農業が不安定化する中、人工知能とロボティクスの力を借りて安定供給が可能になることは、多くの農業関係者にとっても希望の光です。また、この技術がイチゴだけでなく他の果菜類にも応用できるという点で、日本国内のみならず海外市場への展開も視野に入れられ、広範囲な影響をもたらす可能性を秘めています。HarvestXの挑戦がもたらす農業の未来に、筆者も期待を抱かずにはいられません。
HarvestX株式会社について
HarvestX株式会社は、植物工場におけるイチゴなど授粉を必要とする果菜類の完全自動栽培を目指す東京大学発スタートアップです。ロボティクスやAIを専門とするメンバーによって2018年に大学でスタートしたHarvestXは、「植物工場では授粉が必要な果実の生産が難しい」という課題にフォーカスして研究を進め、世界で初めて、ロボットによるイチゴの授粉に成功しました。「未来の世代に、豊かな食を。」をミッションに掲げるHarvestXは、ロボティクスやAI技術を活用し、持続可能な農業の実現のためのソリューションを開発・提供して参ります。