
宇宙から地球を見守る技術が、また一歩前進しました。福岡県に本社を置く宇宙開発企業・株式会社QPS研究所が開発した小型人工衛星「ワダツミ-Ⅱ」が、2026年11月3日にニュージーランドから打ち上げられ、地上との初めての通信に成功しました。衛星に搭載された機器も正常に動作しており、今後の地球観測に向けた準備が進められています。
この衛星の大きな特徴は、一般的なカメラとは異なり、電波を使って地球の様子を捉えられることです。夜間や雲に覆われた場所でも地表を観測できるため、天候や時間帯に左右されにくい情報収集を可能にします。さらに、小型でありながら高精細な画像を取得できる技術も備えています。
QPS研究所が目指しているのは、複数の人工衛星を連携させ、地球の変化を短い間隔で捉えられる未来です。今回の打ち上げ成功は、その実現に向けた重要な一歩となりました。日本発の宇宙技術は、どのような可能性を広げていくのでしょうか。
宇宙へ飛び立った「ワダツミ-Ⅱ」、打ち上げから約80分で初交信に成功

2026年11月3日午前1時41分(日本時間)、ニュージーランド・マヒア半島にある発射場「Launch Complex 1」から、米国のロケット開発企業Rocket Lab社の「Electron(エレクトロン)」が打ち上げられました。ロケットには、QPS研究所が開発した小型SAR衛星「ワダツミ-Ⅱ」が搭載されており、宇宙での新たな任務に向けて出発しました。
打ち上げから約50分後、「ワダツミ-Ⅱ」はロケットからの分離に成功。さらに約30分後には地上との初交信にも成功し、衛星に搭載された各機器が正常に動作していることが確認されました。衛星の状態も良好で、打ち上げから約80分という短い時間の中で、運用に向けた重要な段階を無事に通過しました。
今回の打ち上げミッションには、「The Sea God Surveys(海の神が見渡す)」という名前が付けられています。宇宙から地球を観測するという衛星の役割を思わせる名称であり、「ワダツミ-Ⅱ」という名前とも印象的に重なります。
今回の成功によって、「ワダツミ-Ⅱ」は実際の地球観測に向けた重要な段階を通過しました。ただし、観測そのものが始まったわけではなく、今後も衛星の調整が続けられます。宇宙へ送り出された「ワダツミ-Ⅱ」が、どのような地球の姿を捉えるのか、次の段階にも注目が集まります。
夜間や悪天候でも地球を観測、小型SAR衛星を支える独自技術

「ワダツミ-Ⅱ」に採用されているのは、「SAR(合成開口レーダー)」と呼ばれる技術です。一般的なカメラが光を利用して撮影するのに対し、SARは電波を使って地表の様子を捉えます。雲や噴煙に覆われた場所でも観測でき、昼夜を問わず地球の情報を取得できることが大きな特徴です。
QPS研究所が開発する小型SAR衛星「QPS-SAR」には、独自の大型アンテナが搭載されています。このアンテナは折りたたんで収納できるため、衛星を小型・軽量にしながら、宇宙では大きく広げて強い電波を発することができます。こうした技術によって、従来のSAR衛星と比較して質量を約20分の1、コストを約100分の1に抑えることに成功しました。
さらに、QPS-SARは46cmという高い分解能を持ち、地表の細かな様子まで捉えられる性能を備えています。これは民間のSAR衛星として世界トップレベルの水準であり、小型化と高精細な観測を両立している点が注目されています。
天候や時間帯に左右されにくく、地球の様子を詳しく調べられるSAR衛星。QPS研究所が進める小型化と高性能化は、宇宙からの地球観測をさらに身近で活用しやすいものにしていく可能性を秘めています。
2030年には平均10分間隔の地球観測へ、広がる衛星ネットワーク

QPS研究所が目指しているのは、複数の小型SAR衛星を宇宙に配置し、地球の様子をより短い間隔で観測できる仕組みの実現です。これは「衛星コンステレーション」と呼ばれるもので、複数の人工衛星が連携することで、1機だけでは難しい高頻度の地球観測を可能にします。
同社は2028年5月末までに24機の衛星を投入することを目指しており、2030年にはさらに機数を増やした大規模な衛星ネットワークの構築を計画しています。最終的に目指すのは、平均10分間隔で地球の観測データを提供するサービスです。こうした仕組みが実現すれば、時間とともに変化する地表の状況を、これまで以上に細かく把握できるようになることが期待されます。
衛星の打ち上げも続く予定です。今回の「ワダツミ-Ⅱ」に続き、QPS-SAR19号機「ヤマツミ-Ⅱ」が2026年11月14日以降に打ち上げられる計画となっています。こちらもRocket Lab社のElectronロケットを使用し、「The Mountain God Defends(山の神が守る)」というミッション名が付けられています。
1機ずつ衛星を増やしながら、宇宙から地球を見守るネットワークを広げていくQPS研究所。今回の打ち上げ成功に続く「ヤマツミ-Ⅱ」の動向も、今後の計画を進めるうえで注目されるところです。
宇宙から地球を見守る未来へ、次の一歩に期待

今回の「ワダツミ-Ⅱ」の打ち上げと初交信の成功は、QPS研究所が目指す高頻度な地球観測の実現に向けた新たな一歩となりました。今後はアンテナの展開や初画像の取得など、実際の観測に向けた重要な段階が待っています。
夜間や悪天候でも地球の様子を捉えられる小型SAR衛星。その技術がさらに発展し、複数の衛星による観測ネットワークが広がれば、地球の変化をより迅速に把握できる未来が近づくかもしれません。日本発の宇宙技術がこれからどのような成果を生み出していくのか、引き続き注目したいところです。